「蕎麦切 宮下 三田綱町」 蕎麦の話 季節の移り変わり 賄い ランチ情報 そば屋で一杯
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蕎麦切 宮下 三田綱町
「焼き海苔」
蕎麦屋の海苔はいい
寿司屋の海苔は主役なることはない
鉄火巻も太巻も軍艦巻も爆弾も海苔が無くては成立しないが
主役ではない
脇役でもない所を見ると共演者の位置づけ位か
蕎麦屋の海苔は主役である
焼き海苔を頼むと焼き海苔しか出てこない
マグロもご飯も納豆もでてこない
映画なら
タイトル「焼き海苔」
ロールバックには
主演 「海苔」
と間違いなくのる
海苔の命は儚く短い
海より上げられた海苔は傷みやすい
哀れに思ったかはどうか
手漉き和紙よろしく
すのこにとり、キラキラと神々しく輝く板海苔に生まれ変わる
この板海苔を江戸のころ
蕎麦屋の二階で
旦那衆がもっと旨く粋に焼き海苔を食べられないかと思案する
越後屋さんも「おぬしも悪だの~」と言われながらいたかもしれない
そこで「焙炉」~ほいろ~なる物が誕生する
粋だね~
和紙を張った中敷きに海苔を入れ下からみやこ炭であぶる
ゆったりした時の流れと香りを楽しむ
風流だね~
蕎麦屋の焼き海苔には時の流れと風流と粋がある
パリッと粋に
クイッと一杯いきたいもんだね
ゴールデンウィーク最終日
行楽も終わり
あ~疲れた
疲れているのは奥方も同じ
てんで、今晩はチャチャッと軽く済ませようと
蕎麦屋に行くことになる
まずは冷えたビールをキューと
うめ~
と、一声発する
蕎麦味噌を舐めながら
おぅ亭主
お勧めの酒はなんだ
純米の「越の華」なんかいかがです
じゃー それもらおうか
つまみは蕎麦掻きをくんな
酒が運ばれてくる間にライトアップされている庭に目を移し
昨晩の旅館の若女将は艶ぽかったな~
なめーは「おより」とかいったかな
などと想いを廻らしていると
ちょっとあんた
さっきからなにボ~としてんだよ
薄笑み浮かべてきみわるいよ~ この人は
向かいに座っているかかあの声に現実に引き戻される
おっと 酒が来た
なってんだっけ この酒は
ん~ん
いい酒だ!
襟元がスーとしていて
小股が切れあがっているところが
何ともいえね
馬鹿だねこの人は
酒に襟元とか小股があるもんかね
へいおまち
蕎麦掻きがきたよ
またいいね
ぽちゃりとして
すべすべで真っ白ときた
どうかしちまったよ
ざらざらで蕎麦色してるよ
てなことがありまして
締めはセイロで
そばにおよりなんね・・・
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